テキストエディタ(以後,エディタと呼ぶ)とは文字を入力して書類を作成するた めのアプリケーションです.ワープロは文書の書式やフォント,位置ぞろえ,さ らにはより複雑な機能を使って文書の見栄えをよくする(整形する)ためのアプリ ケーションですが,エディタはそのような整形機能を持たず,ただ単に入力した テキストを編集する機能のみを持ちます.プログラムのコード入力などは文書の 装飾や整形が必要ないのでエディタを使用して作成するのですが,Linuxでは文 書の整形には伝統的にLATEX(後述)が用いられてきたので,見栄えのよい文書を 作成するのにもエディタを使うことが多くなります.しかし,最近では後述する ようにフリーの統合オフィスツールも出回っているので,初めからワープロを使 う人が増えるかも知れません.
エディタは個人ごとに異なる快適な入力環境を満足するためたくさんの種類があ ります.ここでは,Linuxを使う上で最低限知っておきたい3種類について簡単に 説明します.
gEdit(図11)はGNOMEの環境に合わせて作られているエディタで す。最近は、デスクトップ環境に合わせてエディタも用意するのが主流ですの で、別の統合デスクトップ環境であるKDEですと同様にKEditが用意されていま す。これらに特徴的なことは、動作が軽いこと、機能は最小限に押さえられて いること、メニューやボタンを活用して初心者にも使いやすくしていること、な どがあり、後述するEmacsとは対極に位置しています。GNOMEメニューから「プロ グラム」「アプリケーション」のgEditを選択すると起動できます。gEditは一度 に複数の文書を開いて編集することもできるようになっています。
Emacsとは、単なるエディタにとどまらない高機能な統合環境です。ほとんどの 操作がキーボードだけでできるようになっているため、プログラマのようにキー 入力が多い人たちにはホームポジションから手を離さないですべてのことがで きることから、根強い人気があります。また、日本語が扱えるように多国語拡張し たものをかつてMuleと言っていたのでいまだにMuleという人もいます。今は、 Muleの機能までEmacsが持つようになったので、単にEmacsと言えば、多国語が 利用できるものを指します。それから、XEmacsというよりウィンドウシステムを意識したも のも独自に開発されています。こちらは、ボタンやメニューが充実しているの が特徴です。ここでは、操作感を試すのにXEmacsを起動してみましょう。初期 状態ではメニューに登録されていないので面倒ですが、モニタにGのマークのア イコンをクリックして立ち上がるターミナル(後述)に、
$ xemacs &
と入力します。すると、新しいウィンドウが立ち上がります。これが、XEmacsで
す。起動時には、注意事項などを載せた文書が開かれるようになっていますが、
何かキー入力を始めるとそれらは消えてしまうようになっています。(一部、文
書が残ります。)マウスを使用してメニュー項目を開いていってみるとどのよう
な操作が可能かが分かります。
viは主にシステム管理者によって使用されるエディタですが、これが好きな人 はとことん好き、という趣味の分かれるエディタです。ターミナルで使用する ので、動作が軽く環境を選びません。ネットワーク越しにサーバを設定する、 というような用途では必須のエディタといえます。viとはVIsual editorの 略で、一行ずつの編集しかできなかった頃にはこれでも十分にvisualだった ということでしょう。特徴は、モードがあることで、「編集モード」と「入力 モード」があります。すなわち、文字の削除やペーストなどの編集と文字の入 力は別のモードで行うため、同時にはできません。時として、混乱の元ですが、 慣れると重宝します。また、カーソルの移動がhjklのキーに割り当てられてい るので、文字入力と編集とでキーボードから指を離さないで操作ができるのも 人気の理由です。
UNIXでは、このように、キーボードから指を離さない、というのが重要なポイント で、そこが好みの分かれ目になることもよくあります。