モーターやベルの例で紹介した「電磁石」は電気が磁気に及ぼす作用を応用した ものです.電気はどのようにして磁気を発生させるのでしょうか.もっとも単純 な例は図6に示すようなものです.
ここでは,直線上の導線に直流(時間的に変化しない)電流が流れたときに,その 回りにできる磁力線を表現しています.磁力線のできる向きは,電流が進行する 方向に,「右ネジ」が進むとしたときに,ネジの回る方向です.この原理は導線 が「ループ」になったときにも応用できます.そのときには,磁力線は 7のような状態に変わります.ここでも同じく右ネジの法則が使われて います.
このループをたくさん用意したものを「コイル」と言います.電磁石はこのコイ ルを磁力線をたくさん通せる材料の回りに巻いたもので,ハードディスクに情報 を記録するときにも小さな電磁石が使われています.
では,磁気はどのように電気を作るのでしょうか.磁力線が分布している「場」 を磁場(高校物理では磁界)といいます.磁界の中に導線を置くと,電流が流れる のでしょうか.電流は,「電子」が移動して作られているものなので磁界を発生 されることができます.ところが,直流磁界は,例えば,永久磁石を置くだけで も作れるもので静止状態にあるものですので,それだけでは電気は作れません. やはり,何かが「運動」しないと電気を生み出すことができないようになってい ます.その何かの運動は「時間的に変化する磁界」により行われます.つまり, 磁界が時間とともに変化するとき,電気が作られます.モーターは電気により中 の「コア」を回転させましたが,水の勢いで回る水車をその軸に固定して,コア を回転させると,コイルに電流を流させることができます.これが,発電機です.
磁気が電気を生み出す作用を難しい言葉で「電磁誘導」と言います.これが大学 の電気工学の基礎の一つである電磁気学の重要な概念です.以下の実験にも,こ れを確かめるものがありますので,いっしょに考えてみましょう.