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さて、UNIXがパソコンが普及して以降も根強い人気を持って使用されているのは、 このコマンド操作が理由の一つです。コマンドは文法や使用法を知らないと使えな いし、視覚的にわかりづらい場合があり初心者にはなかなか毛嫌いされるものです が、慣れてくると便利さが実感できるようになります。また、便利になるように パ イプやリダイレクトなどの機能も備わっているので、必要な情報を素早く手に入れ たり、操作したりするのに適しています。たとえば、何百とあるファイルの名前を 一斉に変更したり、コピーしたりすることはコマンドを使用すると一発でできます。 GUIの環境ではアイコンを選択したり動かしたりとそれなりに時間がかかるので、 そのあたりがコマンドの人気の理由です。
また、コマンドの使用は、実は、シェルというものを介して行われており、そのシェ ルの機能が豊富であるためにずいぶんと便利になっています。ここでは、コマンド とシェルの便利な機能について実習します。
コマンドはよく使うものだけでかなりあります。使い込んでいくうちに自然と覚え ていくわけですが、今日のところはとりあえずいくつかを試してみて、その後で必 要に応じて使用していくことにします。まずは、代表的なものをいくつか列挙して みますので、試してみてください。なお、今までにも少し出てきましたが、コマン ドを入力する際に、このwebテキストでは
$ ls
のように表示します。ここで、 $ の記号は、ターミナルにあるプロンプ ト記号です。これは、ターミナルへの入力が可能であることを示しているマークで して、MS-DOSの > と同じです。ですので、 $ は入力する 必要がありません。その後の文字から入力してください。また、入力完了後はエン ターキーを押してください。
現在いるディレクトリのことをカレントディレクトリといいます。ログインしてか ら何もしていなければカレントディレクトリはホームディレクトリのままです。こ こで、そのカレントディレクトリにあるファイルの一覧を表示するのは、 ls というコマンドです。以下のように使用します。
$ ls
これでファイルの一覧が表示されます。しかし、ここで表示されるのはファイルの 名前だけです。また、UNIXではすべてのデータがファイルですので、ディレクトリ もテキストファイルもアプリケーション本体もすべてファイルです。これらの区別 は、ディレクトリにはファイル名の おしまいにスラッシュ(/)が付き、実行可能なファイル(アプリケーションなど)は アスタリスク(*)がついているので判別できます。実は、これは、
$ ls -F
と言うように、ハイフンに続けて大文字のFを入力したことと同じ結果になってい ます。このようにハイフンで動作を指定 することをオプションと呼びます。このオプションが実は豊富に用意され、コマン ドの動作を決めています。次に、
$ ls -l
とすると、表示結果がかなり変わります。ファイルの属性や所有者、容量、更新の 時間なども表示されるようになりました。また、
$ ls -a
とすると、表示されるファイルの数がずいぶんと多くなったはずです。 l (エル) はロング 表示オプション、a はall表示オプションです。すべてというオプションをつけるこ とにより、ドット( . )で始まる名前のファイルも表示されるようになり ました。これは、ファイルマネージャのところで隠しファイルと表現されていたも のです。コマンド操作では、このようにオプションのつけ方で出力結果をコントロー ルできます。
ls ではファイルの名前を表示しましたが、ファイルの中身を表示するの は cat です。試しに、
$ cat .bashrc
としてみましょう。シェルの動作を決めている設定ファイルの .bashrc の中身が表示されました。中身はいろいろありますが、先程の ls コマンドが実際には ls -F --color=auto というコマンドと同 じであるようなことも書いてあります。
cat はオプションが少ないですが、それでも、
$ cat -n .bashrc
のように -n をつけると、行番号の表示ができたりします。
cat コマンドは中身を表示するためですが、中身が長くて画面に収まら ないようなものだと最後の部分しか見ることができません。たとえば、
$ cat /etc/skel/.xemacs.el
のようにすると、分かります。そのようなときに、画面の縦の長さ分だけ表示して 止まってくれるものがページャです。もともとは、more というものがあ りますが、より機能にすぐれている less の方がよく使われます。同じ ように、
$ less /etc/skel/.xemacs.el
とすると、画面が最初の部分を表示して止まります。スペースキーを押すとまた一画面分 進みます。pキーを押すと先頭に戻りますし、上下の矢印キーを押すとスクロール します。qのキーで終了します。
ファイルの複製を作る作業をコピーといいます。このコマンドは、cp で す。UNIXでは、このように単純なコマンドでもつづりが省略されているものがたく さんあります。先程の ls もLiStの略です。これは、UNIXがキーボード が無い時代から使用されてきた歴史のためで、マークシートやパンチカードを使用 する際に少しでも文字数を減らそうとしたためです。オプションが単純な一文字の 記号であるのもそのような理由からです。
コピーは、別の場所にファイルの複製を作る作業とファイル名を変更する作業を同時 にできます。すなわち、あるファイルを別の場所に違う名前で作成することが可能 です。また、複数のファイルを一度に別の場所にコピーすることも可能です。しか し、その場合にはファイル名までは変更できないので、MS-DOSの COPY コマンドの方がその点では便利です。コピーコマンドにもオプションが 多数用意されているので、目的に応じで動作を変えることが可能です。
$ cp .bashrc test
の様にすると、先程中を見た設定ファイルの複製がtestという名前で作成されます。
複写ではなく、単なる移動の場合には、mv コマンドが使用されます。使 用法は、基本的には cp と同じですが、mv はただ単にファイ ル名を変更するだけの目的にも使用されます。
$ mv test test2
とすると、先程作成した複製の test というファイルの名前が test2 に変更されます。
午前中にもディレクトリの話をしましたが、ターミナルから種々の操作を行う際に も、ディレクトリを使用してファイルがきちんと整理されている方がやりやすくな ります。ターミナルからコマンドでディレクトリを作成するのは、mkdir コマンドです。たとえば、
$ mkdir linux
とすると、linuxという名前のディレクトリが作成されます。先程作った test2 というファイルを linux ディレクトリに移動させてみましょ う。まず、
$ ls
として test2 というファイルがあることを確認しましょう。次に、
$ mv test2 linux
とします。その後で、再び、
$ ls
としてみると、どうでしょうか。test2 ファイルはなくなっていますか? 代わりに、
$ ls linux
としてみたらどうでしょうか?
作業をしているカレントディレクトリですが、ファイルをディレクトリを利用して 階層構造に整理したのなら、ディレクトリを移動できないと不便です。そのための 移動コマンドが cd で、Change Directory の略です。また、自分がどこ のディレクトリで作業しているのかを表示するコマンドが pwd です。こ ちらは、Print Working Directory の略です。まずは、
$ pwd
としてみましょう。結果は、/virtual/home/linux** となったはずです。 **はご自分の番号が入ります。この教室はNFSとよばれるネットワークファイルシ ステムを使用しているので、最初に、/virtual という見慣れない単語が ありますが、それは気にしないでください。/homeというディレクトリの 自分のディレクトリにいることを教えてくれています。/ は一番おおもとのディレ クトリで樹木になぞらえてルートディレクトリと呼びます。そこの virtual というディレクトリの中の home というディレクトリの中のさ らに linux** ですよ、という意味になっています。/ は階層ディレ クトリの区切り記号です。
次に、実際にディレクトリを移動してみましょう。
$ cd linux
としてみます。再び、pwdコマンドを使用するとどうなるでしょうか。
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