RSL /ECS/ IFSE / Shimane University
Updated on April 4, 2012


遠隔計測研究室における研究テーマ例 (平成24年度用)

担当:古津年章,下舞豊志


以下の説明は少々難しいかも知れませんが, 概略の“雰囲気”は感じてもらえるのでは?
実際はそれほど恐れるほどのことはなく, これまでの講義で習ったことを基礎にしてがんばれば, 自然と電波の関わりの面白さを味わってもらえると思います.


I. 研究テーマ設定“思想”
1.電磁波・無線通信技術の基礎を固める.
2.“先端”リモートセンシング技術に触れる, あるいはリモートセンシングデータ解析を通して, 大気・水域・環境科学とリモートセンシング工学の境界領域の一端に触れる.
3.ある程度まとまった結果が出るような研究テーマ設定. 大学院進学を念頭におけば,更に有用性の高い研究が可能.実力がつく!

II. 卒業研究テーマの大別
1.リモートセンサの設計やシステム開発に関する研究(通信・電波工学寄り)
2.リモートセンシング手法の開発や改良に関する研究(工学に寄るが,科学的要素を含む境界領域)
3.リモートセンシングデータの解析を通した物理現象の解明 (やや科学寄り)
 分野的には
(a) 将来の衛星搭載降雨レーダを念頭においたシステム要素の基礎研究
(b) リモートセンサや現場観測,衛星データを用いた降雨・大気現象の研究
(c) 汽水域を中心にした環境リモートセンシング手法の研究
に大別されます.

III. 具体的なテーマ例

III-a 降雨レーダ設計・観測関係の卒業研究

1. 衛星搭載降雨レーダの高性能化のため基礎研究
 将来のシステムを想定して,合成開口方式(PSAR)とその応用についての研究を行います.

2. 多周波降雨レーダによる降雨強度推定の研究

 将来は,3周波あるいは4周波といった多周波の降雨レーダが想定されます.そのようなシステムを用いると,降雨強度推定の高精度化が図れるはずです.具体的にどのようにデータを処理すればよいか,そのアルゴリズムを考えます.



III-b 大気・降雨観測データの解析

スマトラに設置された大規模な大気・降雨観測システムにより連続的に大気・降雨の観測が行われています.それらをとおして,赤道域の対流活動の様相が明らかにされつつあります.熱帯の降雨特性を明らかにすることで,熱帯気象学の進歩や地球規模の降雨リモートセンシングの改良につなげることができます.また,松江でも小型レーダなどを用いて降雨観測が行われています.

1. 2周波大気レーダによる対流性降雨の雨滴粒径分布推定

 雨滴粒径分布(DSD)は,レーダによる降雨定量的観測などのために重要な情報です.熱帯での雨滴粒径分布観測は少なく,特に,上昇気流の激しい対流性降雨では,DSDの変動が大きく,その特性解明は遅れています.スマトラに設置された2周波のレーダを用いて,DSDを推定し,その特性を調べます.

2. 小型レーダ(マイクロレインレーダ)や小型大気レーダを用いた降雨鉛直構造の研究

 松江やスマトラに設置された小型レーダや大気レーダを用いて,降雨強度や雨滴粒径分布の鉛直構造を調べます.これは衛星通信回線の設計や降雨の物理過程を調べるのに重要な情報となります.また地上で測定した雨滴粒径分布データと比較することで,上空と地上の降雨特性の違いを調べます.

3. TRMMやGPM衛星のための地上検証

 現在,世界初の降雨測定専門衛星として熱帯降雨観測衛星(TRMM)が運用されており,また次の衛星としてGPMが開発されています.これらの衛星観測のためのアルゴリズム開発に資するため,地上設置のレーダやラジオメータを用いて,雨滴粒径分布や大気減衰などの統計解析を行います.

III-c 汽水域の環境リモートセンシング

1. 衛星搭載センサによる水質推定に関する基礎研究

 現場観測データと分光放射計データを用いて,可視・近赤外の多バンドデータから,富栄養価の指標となるクロロフィルa濃度を推定し,衛星観測に応用したいと考えています.

2. MODISによる懸濁物質の推定

 現在,我々の研究室では,衛星搭載センサMODISの観測データを用いて準リアルタイムで宍道湖・中海の濁度マップをWeb公開しています.昨年までの研究で,懸濁物質の起源を推測できる可能性が示されました.今年は,それをMODISに適用する予定です.

V. 関連する科学技術

  1. 電磁波リモートセンシング技術
  2. データ処理技術
  3. レーダ技術,光学観測技術,その他電波応用
  4. 統計解析・処理
  5. 地球環境とその計測技術


上記のような勉強が,具体的な研究に取り組みながら可能です. 自然,環境,電磁波応用,リモートセンシングに興味を持つ人を歓迎します.

主な勉強テーマは,どのテーマを選ぶかにもよりますが, 計算機の利用(プログラミング,数値計算,ファイル操作, データ処理,LANを介した計算機ネットワークの使用方法など), 電磁波と自然対象(雨,大気,水面など)との相互作用の基礎, リモートセンサ理解のもととなるデータ処理の基礎, 地球環境観測の概要,など幅広いものです.


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