計測工学基礎
2022.06.08

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  1. 本日の作業内容

  2. 前回の宿題について

    今回の提出についてですが,チェックリストをつけていたので,形式的にはかなりの人がきちんとできていました.それでも,番号と名前の無い人や,文中での記号がイタリックになっていない人がそれぞれ1人ずついました.せっかくのチェックリストですので,有効に使って欲しかったと思っています.

    それでは内容についてですが,以下のようにあれだけ説明してもまだ折れ線グラフで出す人がいました.折れ線グラフに意味はありません.

    それから,下のように多項式近似でD値を求めようとする人が数名いました.まず大前提として,D 値のように一定間隔で一定量対数的に減少する関数は指数関数以外にありません.それは理工系である我々にとっては一応常識のはずなのですが,まだ理解ができていないようです.残念です.

    次のものもそこそこの人数ありました.b x ではなく,e bx として欲しいところなんですが,基本的にはほぼ同じ 結果となります.なぜならば e -0.186 は0.83になるからです.でも,やはり指数関数にして欲しかったです.

    次のような求め方もダメです.きちんと1桁小さくなる時間を求めましょう.

    最後は今週のワケわからんやつです.もう私には理解ができません.

    さて,で,結局どうやって D 値を求めるかなのですが,実は多くの人が勘違いをしていました.まずは,結果としてのグラフを見てみましょう.下のようになります.

    近似曲線を指数関数で求めると,一発で数式も求まります.簡単です.では,ここからどうやって D 値にするか,なのですが,多くの人が初期値の5009に引きずられていました.生菌数は人が数えた数値でしかも整数なので誤差が無いものとみなしたためでしょうか.実験値には誤差が必ずあります.生菌数と計測時間の両方です.それらの誤差を考慮して最も確からしい関係式として以下の式が出てきました.

    y = 4942.9e -0.186x

    ということで,この式に従って y が1/10になる時間を求めることになります.値はなんでもよいので,10が1になる時間でも,1000が100になる時間でも全て同じです.両辺の自然対数を取って変形して x について整理すると以下の式になります.

    x = (ln 4943 - ln y) / 0.186

    そうやって適当な y を入れて求めた D 値は12.379...となりますので,今回は時間は整数値ということで,小数第一位まで求めることになりますが,まあ小数第二位まで出していても特に問題は無いかと思います.ということで,答えは 12.4 [min] ということになるのですが,なぜか単位が秒になっている人も結構いたので気をつけてください.

    人が数えた生菌数に誤差があるのか,ということですが,一つには数え間違いというものもあります.しかし,それよりも,計数にはある一定の時間を要するために数え初めから数え終わりまで経過した時間の範囲内ですでに数えた菌が死滅したり,数えるまでに死滅したりすることもあり,誤差を含んでいると考えるのが自然です.

    将来的には,画像処理により相当数のシャーレの菌数を瞬時に把握できるといいですね.
  3. 前回の復習

    前回も最小2乗法でしたが,指数関数が入るようなより自由度のある形を試しました.今回も引き続き最小2乗法です.結果の解釈も含めて理解が深まるよう演習を行っていきましょう.

  4. 自習資料

    資料を参考に予習してください.

  5. 演習

    1. 5月25日の漢字書字スピードのデータについて

      表記のデータをグラフ化したものを再度掲載します.以下のようになりました.

      図1 画数と書字時間の関係

      どうもあまり良いフィッティングとはなっていないようです.まず,原点を通らない直線でフィットさせるとどうなるか見てみましょう.実はこの作業は多くの人がやっていたものです.

      図2 原点を通らない線形近似でフィットした場合

      この場合には切片として 0.91 [s] という時間が出てきてしまいます.では,この時間は何なのかということですが,「よーい,スタート」となってから反応して実際に書き始めるまでの時間と考えることも可能です.前回の宿題でそのように考察していれば,切片がある場合でも正解としようと思ったのですが,そのような考察は見られませんでした.

      ただし,上の図2でも直線とのフィットは今一つですし,反応時間が 0.9 [s] というのも余りに遅すぎる感じですね.つまり,元々のデータが直線ではなく,画数が増えて行くにしたがって傾きが小さくなっている状態のために直線では近似できないと考える方が無難なようです.

      では,多項式近似を用いてフィッティングしてみましょう.結果は以下の図3のようになりました.

      図3 多項式近似

      2次の項まで入った結果となりましたが,形としてはかなりよく一致しているようです.では,これで何か解釈ができるでしょうか.

      まず,曲線の式を見てみると,以下のような2次式です.

      y = -0.0065x 2 + 0.4728x + 0.1484

      反応時間が 0.1 [s] 程度というのは常識的な値なので,これは良さそうです.また,1画当たりに要する時間が 0.47 [s] というのも画数の少ない漢字のデータから妥当なように思われます.ということで,結局負の値を持つ2次の係数があることがポイントということになるのでしょうか.

      当たり前ですが,一定の面積の枠の中に漢字を書く作業ですので,画数が増えていくと1画当たりの線の長さは短くなります.なので,画数が増えていっても書字する際に指先が動く距離は比例して増えていくわけではありません.そのため,それを制限する負の係数を持った効果が画数が多くなってくるとだんだんと見えてくる,というのが考察としては順当なものではないでしょうかね.これについても少し先で再び議論する予定ですが,基本的には20画くらいの漢字の線の長さは3画や4画の漢字の3-4倍程度にしかなりません.画数で議論することが実は良くないというそもそもの前提が悪い実験だったというオチでした.すみません.

    2. 放射性元素の半減期

      かつて宿題として出したものですが,再び考えてみましょう.まず使用するデータはリンク先のものです.

      放射線量が半分になる時間のことを半減期といいますが,今回のデータの場合に半減期がどうなるか,見てみましょう.

    3. 重力加速度の計算

      こちらも昨年度の授業で宿題として出したものですが,もう一度見てみましょう.データはリンク先のものです.

      重力加速度は場所によって異なることが知られています.ある場所で物体の落下実験を行ったとします.実験は 100 [m] の高さから物体を落下させ, 0.2 [s] ごとに物体の高さを計測するもので,結果は添付の表のようになりました.このデータを使用して重力加速度を求めてみましょう.

  6. 次回の予習範囲

    次回はt検定について学習します.予習用の資料を参考に予習してください.

  7. 宿題

    いつものレポート提出システムを利用して行います.

    宿題の公開は原則として水曜日の18:00からとなります.また,提出の締め切りは翌週の火曜日の13:00までです.よろしくお願いします.


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